通信の歴史は「速く大量に」の追求であり、それによって私たちの情報伝達は加速し、我々の生活すらも加速された。2倍速で動画を見るが当たり前になり、「タイパ」という言葉も生まれてきた。しかし、速さは同時に「遅さ」を失うことである。では、遅いことによるメリットとは何か。それは「情報を絞る」「連想を揃える」であると考える。情報を絞るとは、「早く大量に」ができないことにより生じる「情報の圧縮作業」のことである。情報を圧縮する時には必ず、そこにその人の意志が加わり、情報に思想がのる。連想を揃えるとは、話者や事象本来の時間軸に生きるということである。作品や語りに真に入り込むには、それと自分の時間軸を揃えることが求められる。2倍速で理解した気になっていてもそれは表面上であり、その背後にアクセスすることはできない。